2023年6月2日(金)

雨の中、ネズミの轢死体を見た。ピンク色の潰れた舌と尻尾が濡れた地面を背に映えている。
左下奥歯を抜きに行く。まずは近場の歯科医院で歯をクリーニングする。その後、紹介状を貰って5駅離れたメガ病院へと向かう。
総合受付に紹介状を提出する。受付の男が用紙を差し向け、会話スピード×3倍で「コチラに名前と住所と電話番号を記入してください。そちらの角に机とペンがあるので。」と喋る。脳内で通常速度に変換して、ようやく言っていることが理解できる。
2階の歯科口腔外科へとエレベーターに乗って、向かう。問診票を提出、少し待つと、「レントゲンを撮りたいので1階へ行ってください」と言われる。1階の放射線科へとエレベーターに乗って、向かう。
放射線を浴びて、2階に戻り、待つ。呼び出されて抜歯の意志を伝えると「明日消毒に来れますか」と聞かれる「明日から自動車の免許合宿に行くので行けないです」「じゃあ一週間後に消毒しましょうか?」「免許合宿は二週間あります」「抜歯後一週間以上空けると良くないんですよね」何も言えない「ちょっと見てみますね」口を開けて歯を見られる「虫歯がヒドイですね、今に痛くなってもおかしくないです」「そうですか」「どうしましますか?」「免許合宿終わってからの17日とか…」「わかりました、では17日で。その間に痛くなるかもしれませんが、そこは理解してもらって」「はぁ」「はい、いいですよ」私は何も良くないけど、医者は私を無視してパソコン画面を見つめるので、ありがとうございました、と小さく呟いて退室する。
無駄足を踏んだ。長々と待たされて予約しただけで2000円も取られた。
報告書を歯科医院に渡してください、と封筒を渡される。紹介状と報告書が行き来しただけ。私は小間使いか、と心中で毒づく。
電車に乗って来た道を戻り、歯科医院に報告書を突きつける。「歯抜けました?」「17日にやります、自分明日から東京離れるので、消毒ができなくて、一週間以内に必要、と言われたから」苛立ちで支離滅裂な言葉しか出てこない。受付のお姉さんは「17日にやるんですね。」と冷めた目で受け流す。
家に帰る。ズボンが濡れているから、脱ぎ捨てて、鈍色のベッドの上で潰れたように横になる。