2023年5月25日(木)

5時起床。弁当なし。
スマホを開くとInstagramにメッセージが来ている。知り合い未満の知り合いから金を振り込んでほしいと丁寧に口座番号まで添えてある。クラウドファンディングと称した乞食行為が、夢を叶えたい若者の熱気によって美化されている。朝から憂鬱な気分にさせられて返信はおろか、適当にいいねやハートのリアクションを返す気にもなれない。
バイトすればいいじゃん。
電車内で綿矢りさ勝手にふるえてろ』を読む。表題作「勝手にふるえてろ」を読み終え、所収「仲良くしようか」を読み切るか読み切らないかのところで舞浜駅に到着、本を閉じて降りる。
ディズニーリゾートラインが奏でるドロリと甘ったるい音楽から身を守るため、両耳にデカい黒豆じみた安物のBluetoothイヤフォンを詰め込む。Spotifyを開くと昨日聴いていたトリプルファイヤーのままなのでそれを流す。
ベイサイド・ステーション駅で降りる。
駅から労働現場へと向かう間、身体を順応させるために聴く曲。労働に赴く身体を慰撫したり、裏腹な諦観に浸したり、皮肉に笑うための歌。

東京事変「私生活」
酸素と海とガソリンと沢山の気遣いを浪費している 生活のため働いて僕は都会(まち)を平らげる

PICNIC YOU「A to Z」
「生きるためには働かなきゃな」とか勝手にみんなを殺すなよバカ 金を燃やして笑ってやるぜ

トリプルファイヤー「スキルアップ
※昨日の日記の歌詞

ラジオ体操あり。
労働。モルタルを練る。トレーニングボード用武器(剣)模型の作成。休憩は2回。昼休憩は1時間。
ゴミ捨て場の廃プラのコンテナからスタイロフォームの板を2枚拝借して剣を彫刻する。トレーニングボード用の模型なので、緊張感をあまり抱かずに作業に没頭できる。実際の武器を観察、メジャーで寸法を測り、実寸大で作成していく。水色のスタイロフォームに赤マジックペンで当たりを付け、削る。そう言えば美大出身なのに彫刻(制作)に興味を抱いてこなかった。大学2年生の頃に石膏で首像を作ったけどやらされた感しかなかった。
水色のスタイロフォームをカッターで削るとガリガリくんのような清涼感ある破片が次々と生じる。板は厚みがあるが二次元である。それを削り三次元が生まれることに地味に感動する。他の職人の作業を気にすることもなく、自分の範囲で独り言をブツブツ言いながら作業を進める。幾ばくかの快楽を感じた脳に「これは労働だ」と語りかける。労働は民衆の阿片である、なんて。
酔えるならその方が良い。明確な思想があるなら反抗すればいい。私は左翼にも右翼にもなりたくはない。子供の頃から金が好きだ。欲しい物が手に入る。労働は嫌いだ。労働は卑しく、奴隷の所業だとギリシャ風に思っている。自尊心が高い怠け者である。スコレーから思想や芸術は生まれる?
無理だ。家賃、食費、倉庫代、本代…etc、労働は金を手っ取り早く得る手段だ。そうしてシステムに組み込まれていく。スコレーは労働の合間に見出していくしかない、電車中吊り広告自己啓発本の衒学的言い換えみたいなことを思う。そう言えば批評家(?)のM(さん)が私について『ただ、「いる」行為を通じて、非人称的なシステムに順応し、その秩序を攪乱し、内破させることを作風とする小寺』(アートコレクターズ2022年5月号)と言っていた。
剣は良い出来だった。俺の作品ではない、からこそ。
労働終わり。17時前である。便乗せず、ベイサイド・ステーション駅から帰る。
電車内、ギリ読み途中だった『勝手にふるえてろ』の「仲良くしようか」とあまり面白くない解説を読み終え、ドストエフスキー罪と罰(上)』を読み始める。藤澤清造感がある。当然だ。藤澤清造ドストエフスキーの影響下にある。『罪と罰』を読まずに『根津権現裏』を読んでいたなんて西村賢太ファンを自覚して少し恥ずかしくなる。
不動産屋から連絡あり。「入居安心サービス料」と「消毒料」を外す。「火災保険」も自分で選び年間5千円は安くなる。合計で5万円ほど初期費用が安くなった。金のことばかり考えている。
帰る。録画した水曜日のダウンタウンを見る。日記を書く。
寝る。